『さがす』『Ribbon』2022年映画感想群①
2023年1月19日
2023年1月19日
2022年に映画館で鑑賞したものの一切感想を吐き出していなかった作品達を羅列する記事です。
殆ど頭の片隅の記憶をほじり返した内容になるので、必ずしも作品の内容と合致するものではないと思われるので悪しからず。
『さがす』3月12日鑑賞
佐藤次郎の普段のコミカルさとはかけ離れた下町のダメ親父の風貌と演技はジャスト。他のキャスト等も好演で見応えはあった。
しかしながら本作の見どころの一つであろう「厭さ」が物語をセンセーショナルに見せる為の装置にでしかなっていないように思えたのが気になる所。
本作は大阪の下町(多分西成)をイメージして作ったのは明白で、その上に介護問題であったりを絡めながらあくまで現実の延長線上の話である造りをしているのだが、
その割には西成の街に住む劇中のキャラクター達の生活を含む現実味や画面外の余白を感じず、あくまでそういう下町のキャラだから、下町だからで進行していく様に見え現実の下町への不義理を感じた。
娘が男友達に乳を見せて協力してもらうシーンもそれまで描写された娘の気丈さを伺うに不安だから着いてきてもらう為に見せる様には思えなかった為引っ掛かる点で劇中のキャラが成した行動というよりは外部からそういうイベントを与えたかのように見える。
犯人目線でのパートをわざわざ作ってしまう程に作品に余白が存在するのが嫌でそれを埋めるために厭な演出を散りばめた、そういう印象の作品でした。
ラストの卓球の打ち返しシーンは演出としてはグッときて良いんだけど、その為の逆算的な卓球場設定というのも現実味を削ぐ要因かと。
そういや、亡くなった奥さんって序盤はもう少し高い位置から首吊りで亡くなっていたと思うんだけど父親パートでは地べたで首吊りしたことになってたわけでそこがとてもモヤモヤ。
偽装工作をそのあとしたと考えても、病気を踏まえると高い所での首吊りは難しいだろうし理に適っていないのでもしあの辺の解法あるなら教えてほしいぞw
『Ribbon』3月6日鑑賞
”のん”の初監督作ということで前々から見ること自体は確定していたのだが正直映画の内容自体は俳優が作った映画というものに良い印象を持っていなかったのは確かで大して期待はしていなかった。
だが、処女作にしてなぜか既にこなれているかの様にしっかりと映画になっていて出来がよく大変御見それいたしました。
何でもこなせちゃう人ってのは本当に何でもこなせちゃうんだなと。
天間荘の三姉妹の舞台挨拶で生で見たけどイメージそのままで凄かったなあ。
で、作品ですけれども美大に通う女友達二人がコロナ禍で登校から卒業制作から何もかもができなくなり、どうやって芸術を続けたらいいのか、どうやって暮らせばいいのかに苦悩すると搔い摘めばそんな内容で、
コロナ禍になり映画産業も上映自粛だったりで被害を被ったわけですが、自粛解禁後にそのにっくきコロナ禍を真っ向から糧にしたフィクション作品ってあんまり無くて、例えば『ケイコ 目を澄ませて』でも描写はあれど現実らしさを与える為のあくまでフレーバー的な要素に落ち着いちゃってる傾向はあると思うんです。
そんな中本作は突発的な外部からの要因を憎みながらも自分の行動範囲で青春や生きがいを見つけ出す、まさしく「Withコロナ映画」に相応しい1本に仕上がっている。
もう1本『貞子DX』という「Withコロナ映画」の分類に相応しい作品も存在するけどあいつはまた別ベクトルだからなあw
前半は非常にのんべんだらりとしていて学校も無いしでアパートでずっとだらだら過ごす”のん”と只々流れていく時間と偶にある来訪者等のイベントが、
後半は卒業であったり就職であったりの節目や差し迫る出来事への焦燥感が湧き出してくる。
その一連の緩急の流れが生々しく現在進行形で若者が感じている気持ちを等身大の目線で感じ取れたる造りになっている。
何のため誰のためなのかが明確であった自身の活動の目的が誰のせいでもなくリセットされる虚無感と、これまでを捨てて新たな目的の再設定をしなければならないという怖さ、そして新しい目的への希望と困難を乗り越えるために必要な要素が上手に描かれている。
全体がとぼけた感じで進行するのが”のん”との相性が良いんだけど、主人公の家族が出てくるシーンが何回かあってそれが「コロナ漫談」と言っても過言でないコッテコテの古風な出来栄えで流石にとぼけすぎていて浮いている様に見えたり。
後、樋口監督謹製の度々現れるCGのリボンはぶっちゃけ稚拙だしあまり効果的でなし。
初監督でこんなにしっかりした映画が撮れる今後の”のん”の活躍にも期待大です。
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